人生100年時代と言われる現代において老後の生活資金に対する関心はかつてないほど高まっています。特に60代という年代は定年退職を迎えて現役時代のような安定した給与収入が減少する一方で公的年金の受給が始まるまでの空白期間が生じたり再雇用制度を利用して働き続けたりとライフスタイルや収入の構造が劇的に変化する非常に重要な転換期となります。これまで子育てや住宅ローンの返済に追われていた家庭も子どもが独立して夫婦二人きりの生活に戻ることが多く日々の支出の内訳も大きく様変わりします。定年後のセカンドライフを豊かで安心できるものにするためには現在の生活費がどれくらいかかっているのかを正確に把握し将来必要となる資金を予測した上で計画的な家計管理を行うことが不可欠です。本記事では60代の夫婦二人が生活していく上で必要となる平均的な生活費の金額やその詳細な内訳そして年金を中心とした収入の現実から具体的な節約術に至るまで公的な統計データや一般的な経済事情に基づき幅広く徹底的に調査し解説いたします。老後資金に対する漠然とした不安を解消し充実した夫婦の時間を過ごすためのガイドとしてぜひお役立てください。
夫婦二人で暮らす60代の生活費の平均額と主な内訳

総務省統計局のデータに見る60代夫婦二人の基本的な生活費
老後の家計を見直すにあたってまず基準となるのが一般的な世帯でひと月にどれくらいの支出があるのかという平均値を知ることです。総務省統計局が毎年発表している家計調査報告によれば夫婦二人以上の無職世帯におけるひと月の消費支出の平均額はおおむね約25万円から27万円程度で推移しています。ただし60代前半はまだ就労している世帯も多く現役時代と変わらない水準で生活している場合もあるため60代全体の平均支出額は約29万円前後となるというデータも存在します。この平均額には日々の食費や水道光熱費だけでなく被服費や娯楽費なども含まれています。しかしここで注意しなければならないのはこの統計データにおける住居費が非常に低く算出されているという点です。これは調査対象となっている60代夫婦の多くがすでに住宅ローンを完済した持ち家に住んでいるためであり賃貸住宅にお住まいの夫婦やまだ住宅ローンが残っている世帯の場合はこの平均額に家賃やローン返済額をそのまま上乗せして考える必要があります。したがって自分たちの実態に合わせた正確な生活費を算出するためには平均値という表面的な数字だけを鵜呑みにせず各家庭の個別事情を加味してシミュレーションを行うことが極めて重要となります。
食費や住居費など生活を維持するための基礎的な支出内訳
生活費の内訳を細かく分解していくと生きていく上で絶対に欠かすことのできない基礎的な支出である基礎生活費が見えてきます。60代夫婦二人の場合ひと月の食費の平均は約7万円から8万円程度とされています。現役時代に比べて外食の機会が減り自炊の割合が増えることで食費が下がる傾向にある一方で健康に配慮して質の高い有機野菜や国産の肉魚を選ぶようになるなど食材に対するこだわりが強くなり結果として食費が高止まりする世帯も少なくありません。次に水道光熱費ですがひと月の平均は約2万円から2万5千円程度となります。60代になり夫婦が一日中自宅で過ごす時間が増えるとエアコンなどの空調設備を使用する時間が長くなり現役時代よりも電気代が上昇する傾向が見られます。また住居費については前述の通り持ち家でローン完済済みであれば固定資産税や火災保険料の月割り分そして将来の修繕積立金としてひと月あたり2万円から3万円程度を見積もっておくのが一般的です。これらに加えてシャンプーや洗剤トイレットペーパーなどの日用品費としてひと月約1万円から1万5千円程度が必要となりこれらが最低限の生活を維持するための強固な土台となる支出項目となります。
医療費や交際費など60代特有の変動しやすい支出項目
60代という年代に入ると身体的な衰えを自覚する機会が増え現役時代とは異なる特有の支出が増加し始めます。その代表格が医療費です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療で定期的な通院や服薬が必要になるケースが多くひと月の医療費の平均は約1万5千円から2万円程度となります。日本の医療保険制度では70歳未満の自己負担割合は原則3割であるため手術や入院などの突発的な事態が発生した場合には一時的に高額な医療費が必要となるリスクも抱えています。また年齢を重ねるにつれて歯の治療やインプラント補聴器の購入など保険適用外となる高額な出費が発生する可能性も考慮しておかなければなりません。医療費に加えて大きく変動するのが交際費です。60代は子どもの結婚や孫の誕生といった喜ばしいライフイベントが重なる時期でもあります。結婚祝いや出産祝いさらには孫のお小遣いやランドセルの購入資金など親族間の付き合いに関わる出費が突発的に発生します。また親の介護費用や葬儀費用などの負担がのしかかってくることもあり交際費や特別支出として年間で数十万円単位の予備費をあらかじめ確保しておくことが家計の破綻を防ぐための重要な防衛策となります。
ゆとりある老後生活を送るために必要とされる上乗せ金額
最低限の生活を維持するだけではなく趣味や旅行を存分に楽しみ精神的にゆとりのあるセカンドライフを送りたいと考える夫婦は多いでしょう。生命保険文化センターが行った意識調査によれば夫婦二人でゆとりある老後生活を送るために必要と考えられるひと月の生活費の平均額は約36万円から38万円程度とされています。基本的な生活費である約25万円から27万円に対してさらに約10万円から14万円ほどの上乗せが必要になるという計算です。このゆとりのための上乗せ資金の主な使い道としては夫婦での国内旅行や海外旅行美術館やコンサートなどの芸術鑑賞ゴルフや登山といった趣味にかかる費用などが挙げられます。また老朽化した自宅のバリアフリー改修や最新の家電製品への買い替え老後の運転を安全にするための先進安全技術を搭載した自動車への乗り換えなど生活の質を向上させるための設備投資もゆとりある生活には欠かせない要素となります。この上乗せ金額を現役時代の貯蓄から取り崩すのかそれとも年金以外の不労所得や再雇用による労働収入で賄うのかを60代の早い段階で明確に計画しておくことが理想的な老後を実現するための鍵となります。
夫婦二人で過ごす60代の生活費を支える収入源と年金の現実
60代前半と後半で大きく変わる就労収入と年金受給の割合
60代の家計を考える上で最も注意すべき点は60代前半と60代後半で収入の構造が全く異なるということです。かつては60歳で定年退職を迎えると同時に年金生活に入るのが一般的でしたが法改正により現在では公的年金である老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給開始年齢は原則として65歳に引き上げられています。そのため60歳から64歳までの5年間は無年金状態となるか部分的な特別支給の老齢厚生年金しか受け取れないケースが多く継続雇用制度や再就職を利用して働き続けることで生活費を稼ぐ世帯が大多数を占めています。しかし再雇用による就労では現役時代と比較して給与水準が大幅に下落することが多くこれまでの生活水準を維持することが難しくなるという現実に直面します。そして65歳を迎えると公的年金の本格的な受給が開始され収入の柱が労働収入から年金収入へと完全にシフトします。このように60代は年代によって収入の性質が劇的に変化するため前半は労働収入と貯蓄の取り崩しでしのぎ後半は年金収入をベースに家計を再構築するという二段階の緻密な資金計画が求められる極めて特殊な年代であると言えます。
夫婦で受け取れる公的年金(国民年金と厚生年金)の平均受給額
65歳以降の夫婦の生活費を支える最大の基盤となる公的年金ですが実際にどれくらいの金額を受け取ることができるのかを正確に把握しておくことは非常に重要です。日本の公的年金は国民年金と厚生年金の二階建て構造になっています。厚生労働省の統計によると自営業者や専業主婦などが加入する国民年金の平均受給額はひと月あたり約5万円から6万円程度です。一方会社員や公務員として長年勤務した人が加入する厚生年金の平均受給額はひと月あたり約14万円から15万円程度となっています。夫が長年会社員として働き妻が長年専業主婦であったというモデル世帯の場合夫の厚生年金約15万円と妻の国民年金約6万円を合算して夫婦二人のひと月の年金収入の合計は約21万円程度となるのが一般的な目安です。また夫婦ともに会社員として長期間働き共働き世帯であった場合は夫婦それぞれが厚生年金を受け取ることができるため合算した年金収入がひと月に25万円から30万円以上となり生活費の大部分を年金だけで賄える安定した家計となるケースも多く見られます。自身の将来の正確な年金受給額については毎年誕生月に送付されるねんきん定期便や日本年金機構のウェブサイトなどで事前にしっかりと確認しておくことが不可欠です。
退職金や企業年金など公的年金以外の重要な収入の柱
公的年金だけでは生活費が不足する場合に大きな助けとなるのが企業から支給される退職金や企業年金などの独自の給付制度です。長年勤め上げた企業からまとまった金額として支給される退職一時金は老後の生活基盤を安定させるための非常に強力な切り札となります。大企業を中心とした統計では定年退職時の退職金の平均額は1500万円から2000万円程度とされていますが企業規模や勤続年数によってその金額は大きく異なります。また近年では退職金を一時金として受け取るだけでなくあらかじめ設定された期間にわたって年金形式で受け取る確定給付企業年金や従業員自らが掛け金を運用して将来の受給額を決定する企業型確定拠出年金を採用する企業も増加しています。これらの企業年金は公的年金に上乗せされる強力な三階部分の収入となりゆとりある生活費を確保するための重要な役割を果たします。退職金を一括で受け取って住宅ローンの残債を一気に完済することで毎月の固定費を劇的に下げる戦略をとるかそれとも年金形式で受け取って毎月の収入を底上げし生活費の足しにするかという受け取り方の選択は退職後の税金や社会保険料の負担にも直結するため夫婦で慎重に検討し最適な手段を選択する必要があります。
年金だけでは生活費が不足する場合の収支ギャップの実態
多くの場合公的年金だけでは夫婦二人の生活費を完全に賄うことは困難であり毎月の家計において収入を支出が上回る赤字が発生します。例えば夫婦二人のひと月の生活費が27万円で年金収入が21万円であった場合毎月6万円の赤字が生じることになります。この状態が65歳から90歳までの25年間継続すると仮定した場合6万円の12ヶ月分である72万円が25年間積み重なり合計で1800万円の資金不足が発生するという計算になります。過去に大きな話題となった老後2000万円問題という言葉の根拠もまさにこの毎月の年金収入と生活費の収支ギャップに由来しています。この不足分を補うためには現役時代から計画的に貯蓄を行っておくことはもちろんのこと退職金を計画的に取り崩したり個人型確定拠出年金や少額投資非課税制度などを活用して資産運用を行い自らの力で資産寿命を延ばす努力が求められます。また65歳以降も健康なうちはパートタイムやアルバイトなどの短時間労働で毎月数万円の労働収入を得ることでこの収支ギャップを埋め貯蓄の目減りを最小限に食い止めるという選択をする高齢者も年々増加傾向にあり生涯現役という考え方が生活費を維持するための最も現実的な解決策の一つとして定着しつつあります。
夫婦二人の60代における生活費を見直し節約するための具体策
固定費の削減の要となる通信費と保険料の徹底的な見直し
年金生活に向けて限られた収入の中で夫婦二人の生活費を最適化するためには毎月必ず発生する固定費の削減が最も効果的であり最初に手をつけるべき重要なポイントとなります。まず着手すべきはスマートフォンの通信費です。大手キャリアの無制限プランを契約したままになっている場合格安スマートフォン会社や大手キャリアのオンライン専用低価格プランに乗り換えるだけで夫婦二人でひと月あたり1万円以上の節約効果を生み出すことも十分に可能です。自宅のインターネット回線とのセット割引などを活用すればさらに通信費を圧縮することができます。次に徹底的に見直すべき項目が生命保険料です。子育てが終わり子どもがすでに独立している60代夫婦の場合万が一の事態に備えるための数千万円規模の高額な死亡保障はもはや不要となっているケースがほとんどです。死亡保障の掛け金を減額するか解約しその代わりに年齢とともにリスクが高まる病気やケガに備えるための医療保険やがん保険へと保障内容をシフトさせることで安心を確保しながら毎月の保険料負担を大きく引き下げることができます。固定費の削減は一度手続きを行えばその後何年にもわたって節約効果が持続するため極めて優先度の高い家計改善策となります。
住宅ローンの完済や住み替えによる住居関連費用の最適化
毎月の生活費の中で最も大きなウエイトを占めるのが住居費ですが60代というタイミングは住環境を抜本的に見直す絶好のチャンスでもあります。まだ住宅ローンが残っている場合は手元にある退職金や預貯金の一部を活用して繰り上げ返済を行い定年退職と同時にローンを完済してしまうことが理想的です。ローンがなくなることで毎月の支出は劇的に減少し年金収入だけでも十分に生活できる家計へと体質改善を図ることができます。また子どもが独立して夫婦二人だけになった家庭において郊外にある広すぎる一戸建ては掃除や庭の手入れといった肉体的な負担が大きくなるだけでなく固定資産税や将来の修繕費用といった金銭的な負担も重くのしかかります。このような場合は思い切って現在の自宅を売却し利便性の高い駅前のコンパクトなマンションに住み替えるというダウンサイジングも有効な選択肢となります。バリアフリー設備の整った物件を選べば将来介護が必要になった際の不安も軽減されます。さらに近年では自宅を担保にして老後資金を借り入れ死後に自宅を売却して清算するリバースモゲージという金融商品を利用し住み慣れた家で暮らしながら生活費を調達するという新たな手法も注目を集めています。
自動車の維持費削減を目的としたカーシェアリングや手放す選択
地方都市に住んでいる場合や交通網が発達していない地域では自動車は生活必需品ですが夫婦二人の生活費を圧迫する大きな要因でもあります。自動車を所有しているだけで毎年の自動車税や二年に一度の車検費用さらには自賠責保険や任意保険の保険料そして駐車場代やガソリン代といった多額の維持費が継続的に発生しその総額は年間で数十万円に達します。60代になり通勤で毎日車を使用することがなくなったのであれば本当に夫婦それぞれに一台ずつ車が必要なのかあるいは車そのものが必要なのかを冷静に見直す時期に来ています。夫婦で二台所有している場合は一台に減らすだけでも維持費は半分になります。また都市部に住んでおり公共交通機関やタクシーを日常的に利用できる環境にあるのであれば思い切って自動車を手放し必要な時だけレンタカーやカーシェアリングを利用するというスタイルに変更することで生活費を大幅に節約することが可能です。高齢者の運転による交通事故のリスクが社会問題化している昨今においては自動車を手放すことで事故のリスクを未然に防ぎ自治体が提供している高齢者向けの公共交通機関の割引制度などを活用して安全かつ安価に移動手段を確保するという考え方も非常に理にかなっています。
日々の食費や光熱費を無理なく抑えるための生活習慣の改善
固定費の削減に加えて日々の生活習慣を少し見直すだけで変動費である食費や光熱費を無理なく抑えることが可能です。食費の節約において最も重要なのは食材の廃棄いわゆる食品ロスを徹底的に減らすことです。夫婦二人だけの生活では食材を余らせて腐らせてしまうことが多いため買い物の前に冷蔵庫の中身を確認して必要な分だけを計画的に購入する週間を身につけることが大切です。またスーパーの特売日にまとめ買いをした肉や魚はすぐに一回分ずつ小分けにして冷凍保存するなどの工夫を取り入れることで無駄な出費を抑えることができます。光熱費の節約については古い家電製品の買い替えが長期的な視点で大きな効果をもたらします。十年以上前の冷蔵庫やエアコンを最新の省エネ家電に買い替えることで初期投資はかかりますが毎月の電気代を劇的に削減することができます。また支払いの際には現金ではなくクレジットカードやスマートフォンのコード決済といったキャッシュレス決済を積極的に活用しポイントを効率的に貯めて日々の買い物に充当するポイ活を夫婦で楽しみながら実践することも生活費の足しにするための有効な現代的節約術として広く普及しています。
夫婦二人の60代における生活費についてのまとめ
今回は夫婦二人の60代における生活費についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・60代夫婦二人の平均的なひと月の生活費は約25万円から29万円程度である
・ゆとりある老後生活を希望する場合はひと月に約36万円以上の資金が必要となる
・食費や住居費などの基礎的な支出に加えて医療費や交際費の備えが重要になる
・60代前半は継続雇用による労働収入が中心となり65歳以降は年金収入へと移行する
・夫婦二人が受け取れる公的年金のひと月の平均額はおおむね21万円から25万円程度である
・退職金や企業年金をどのように受け取り活用するかが老後の生活水準を左右する
・毎月の年金収入だけでは生活費が不足する収支ギャップが発生しやすい点に注意が必要である
・格安スマートフォンへの乗り換えや不要な生命保険の解約により固定費を大幅に削減できる
・住宅ローンの繰り上げ返済やコンパクトな住宅への住み替えが住居費の節約に直結する
・通勤がなくなった場合は自動車の所有台数を減らすかカーシェアリングの活用を検討する
・食材の小分け冷凍や計画的な買い物により食品ロスを防ぐことが食費の節約につながる
・最新の省エネ家電への買い替えやキャッシュレス決済のポイント活用が家計を助ける
60代は定年退職や年金受給の開始など、収入と支出のバランスが大きく変化する重要な転換期です。今回ご紹介した平均額や内訳を参考にしながら、ご自身の家庭の収支状況を早めに把握し、計画的な資産管理を行うことが安心につながります。無理のない範囲で固定費の見直しや節約を実践し、豊かで穏やかなセカンドライフを実現していきましょう。


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